うつ病は誰しもが発症する可能性がある病気であり、現代社会ではうつ病を発症する人が増えています。
うつ病とまではいかずとも、誰しも気分が落ち込む事はあるでしょう。
このような気分の落ち込みなどに腸内細菌が深く関係している事が分かってきています。
気分が落ち込みやすい、メンタルが不安定などの悩みがある人は、腸内環境を整える事を行ってみてはどうでしょうか?
この記事では、うつと腸の関係性についてと腸内環境の整え方について解説しています。
うつと腸の関係
うつ病の治療は抗うつ薬などの薬物療法が一般的ですが、薬物療法だけではうつは治りません。
何故なら、「うつの症状を薬で抑えているだけ」に過ぎない対症療法だからです。
根本的にうつを治すためには食事や心理療法なども含めた総合的な体質改善が必要です。
確かにうつは精神的なストレスが原因で発症しますが、精神的に強い人、弱い人とがいるように生まれ持った気質と育ってきた環境などにも左右されます。
この中の育ってきた環境の中には腸内環境も含まれます。
近年の研究では、腸内環境とうつ病との関係性が徐々に分かってきています。
簡単に言うと、腸内環境が良いとうつ病にはなりにくいそうです。
そして腸内環境の良し悪しは、主に食生活が関係してきます。
うつ病の改善には食事の改善が必須だという事なんですね。
次の項でもう少し詳しく説明していきます。
腸内環境がセロトニンを増やす
セロトニンって聞いた事ありますか?
通称「幸せホルモン」と呼ばれ、テレビなどでも取り上げられる機会が増えたので、ご存知の方も多いかと思います。
このセロトニンが気分や感情をコントロールしてくれる役割をしており、心の安定に必要な物質なのですが、うつ病にかかってしまった人はセロトニンの分泌量が減少している事が多いのです。
さて、このセロトニンはどこにあると思いますか?
なんとセロトニンの約9割が小腸に存在します。
ほとんどのセロトニンは腸内に存在し、脳内にあるセロトニンの量はごく少量なんですね。
そしてこの少量のセロトニンが脳内で作用する事で、精神的な安定性を保つわけです。
では、セロトニンを増やすためには何をするべきか気になりますね。
このセロトニンは食べ物から「トリプトファン」を摂取しないと、体内で合成できないんです。
しかし、いくらトリプトファンを摂取したからといってセロトニンが増えるわけではないのです。
トリプトファンを合成するためには腸内細菌がバランス良く存在しないと効率的に生産されないのが分かっています。
無菌状態のマウスと普通の腸内細菌のマウスとでは、無菌マウスの方が血中のトリプトファン濃度が高いそうです。
血中のトリプトファン濃度が高いという事は、その分トリプトファンがセロトニンに合成されずに残っているという事です。
セロトニンを増やすためには、トリプトファンを摂取する事ときちんと合成できるように腸内環境が整っておくことが必要なわけです。
ちなみにトリプトファンは大豆製品や乳製品、穀物類、卵やバナナなどから摂取できます。
また、セロトニンの合成に関与するビタミンB6、ナイアシン、葉酸などのビタミンを合成しているのも腸内細菌になります。
つまり腸内環境が整っていないと、セロトニンなどのホルモンはもちろんの事、ドーパミンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質など、人間が生きていく上で必要な機能が働かないという事です。
腸内環境がいかに大事か伝わったでしょうか?
腸内環境が整う事で、精神的にも強くなれるわけです。
腸内環境を整える食事法
腸内環境を整えるためには、どのような事に注意したら良いのでしょうか?
食事の要点をお伝えすると、高繊維質・低糖質が基本です。
現代の食事では食物繊維の量が減り、反対に炭水化物が増えています。
高繊維・低糖質とは反対になりやすいのです。
食物繊維がたっぷりの食事の利点は、善玉菌のエサになる事です。
食物繊維を多く取れば、その分腸内細菌が増え、体内でセロトニンの合成が出来る事で精神的に安定しやすくなるという事です。
また、高血糖には注意が必要です。
糖質は悪玉菌の好物です。
糖質過多になってしまうと、腸内細菌のバランスが悪玉菌優勢になってしまい、善玉菌の働きが弱まります。
実際に糖尿病の方は、うつ病の発症率が約3割も髙くなるというデータもあるそうです。
プロバイオティクスとプレバイオティクスについても知っておきましょう。
プロバイオティクスとは腸内細菌の元となる乳酸菌やビフィズス菌などの細菌を含む食品です。
ヨーグルトや味噌、納豆、漬物、キムチなどの発酵食品がこれに当たります。
プレバイオティクスとは、腸内細菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖が豊富な食品です。
玉ねぎ、キャベツ、ブロッコリー、きのこ類、こんにゃく、イモ類、果物などがこれに当たります。
この2つを意識的に取る事で、腸内細菌を増やし、育てる事が出来るのです。
それでは最後に今回の内容をまとめましょう。
まとめ
現代社会においてうつが増える要因は食生活の変化とも関係があるようです。
近年、腸内細菌とうつとの関係性が明らかになってきており、腸内細菌の状態は食生活と関係があります。
低線維・高糖質の食の西洋化によって、腸内に善玉菌が少なくなると、幸せホルモンのセロトニンの分泌量が少なくなり、うつ病を発症しやすくなるという事でした。
うつ病までは行かずとも、精神的に落ち込みやすい、気分が優れない状況が続いている人は食生活にも目を向けてみると良いかもしれませんね。
食事はプロバイオティクスとプレバイオティクス、発酵食品と野菜や果物類で腸内細菌とエサとなる食物繊維を多く取るように心掛けましょう。