圧迫骨折は高齢者に多い背骨の骨折です。
圧迫骨折を起こすとしばらく安静にしなければならないため、高齢者の場合はその後に起こる筋力の低下や体力面の低下などの二次的な障害にも注意しなければなりません。
病院などでリハビリを行ってもらうのも大事ですが、それよりも自宅で行うリハビリの方が重要でより効果が期待されます。
この記事では、自宅で行える圧迫骨折のリハビリ方法について紹介します。
ご自身やご家族が圧迫骨折になってしまったという方は要チェックです!
圧迫骨折のリハビリの考え方
まず、圧迫骨折のリハビリを考える上で重要なのは何でしょう?
圧迫骨折の特徴は
「高齢者に多い」
「骨粗しょう症と関係がある脆弱性(ぜいじゃくせい)骨折」
「背骨の変形(つぶれた形のまま)による体幹機能の低下」
です。
これをもう少し踏み込んで考えていくと、
「高齢者に多い」→「必要以上の安静は廃用(はいよう)症候群を招いてしまう」
「骨粗しょう症と関係がある脆弱性骨折」→「そもそも骨密度・骨強度の改善が必要」
「背骨の変形(つぶれたまま)による体幹機能の低下」→「円背姿勢になり腹背筋が弱くなる」
圧迫骨折後のリハビリでは、安静期間中いかに筋力や体力面を低下させずに安全な運動を取り入れて、廃用を起こさないようにするか。
そして徐々に運動強度や体幹機能を向上するための運動を行うか、が重要なんです。
リハビリ開始時期は?
リハビリ開始の時期は自宅で療養している場合は受傷後2~4週以降で、コルセットを装着してから活動していく事になります。(入院している場合は活動量を医療機関が管理できるので、入院翌日くらいから出来る範囲でリハビリが始まる事が多いです)
最初のうちは痛くて起きるのも辛いですが、2週間ほど経つと当初の痛みよりは軽くなっているでしょう。
その頃から、まずは座っている時間を延ばしていくようにしましょう。
高齢の場合は体力面が低下するのも早いので、10分くらいからでも良いので座ってもらうようにします。
座っている時は姿勢に注意。
猫背のように身体を丸くして座っているのは骨折部に負担がかかりやすくなりますので、出来るだけ背筋を伸ばす事を意識して座りましょう。
4週間目以降では起きあがる時の痛みもだいぶ楽になっていると思います。
この頃から少しずつ立って動くようにしていきます。
圧迫骨折は立ち上がったりする時には痛みが出やすいですが、一度立ってしまえば歩くのにはさほど痛みがないのが特徴です。
家の中を歩いたり、慣れてきたら家の周りを軽く散歩したりするのも、身体を必要以上に弱らせないためのリハビリになります。
骨折の程度や痛みは個人差が大きいので、期間はあくまで目安です。
無理して動き過ぎるのも良くないし、安静を必要以上にとるのも身体が弱り、元の体力を取り戻すのに時間がかかってしまいます。
時期別によるリハビリの流れみたいなのは分かりましたか?
それでは自宅で行えるリハビリ方法をご紹介します。
自宅で行う圧迫骨折のリハビリ方法
圧迫骨折のリハビリでは主に「背筋の強化」と「下肢筋力・バランスの強化」が重要です。
今回は「座って行える方法」と「立って行える方法」の2つに分けてご紹介していきます。
【座って行うリハビリ方法】
ただ黙って座っているのも意外としんどい事なので、少し運動を行っていきましょう。
①バンザイ運動
座っている姿勢でバンザイをするように両手をゆっくり前から頭の上まで挙げていき、ゆっくり降ろします。
この運動では、バンザイをする事で身体を伸ばす背筋の収縮が起こります。
また、ゆっくりと両手を上げ下げする事で、手の重みが前側にかかり体幹部分には前に倒れ込む重さがかかります。
この手の重さに対して、身体を直立に保つようにするため腹筋と背筋が協調して働き、腹圧を高めるように作用してくれることで体幹の安定性が良くなる運動となります。
両手の位置を水平に保つ時が、一番負荷が加わります。
慣れてきたらしばらく前にならえのように止めておく運動や少し重りを持ってしてみましょう。
②太ももの筋力トレーニング
座った姿勢のまま膝を伸ばして脚を持ちあげます。
大腿四頭筋と言う太ももの筋肉を使う運動です。
太ももの筋肉は脚の筋肉の中で一番大きい筋肉なので、この筋肉が弱ると立つ、歩く動作などに影響してしまいます。
注意点は、膝を伸ばすと太もも裏の筋肉が引き伸ばされて、体幹部分が丸くなってしまいやすいという事。
体幹が丸くなってしまうと骨折部への負担があがってしまいます。
脚を上げすぎると身体が丸くなってしまうので、身体が曲がらない程度で行うようにしましょう。
少し余裕があるのなら、膝を伸ばしたときに同時に足首を上に反らすようにするとより効果的な運動になります。
③ふくらはぎの筋力トレーニング
両足を床につけた状態から踵上げを行います。
ふくらはぎの筋肉を使う運動で、ふくらはぎも先ほどの大腿四頭筋と同じように立って歩く動作で重要な筋肉になりますので、弱らせないように刺激しておきましょう。
【立って行うリハビリ方法】
①片脚立ち
片脚につき1分間を目標に行います。
バランスが不安定な場合は壁などを支えにしても構いません。
1分間の片脚立ちは運動量として歩行53分間の程に相当すると言われています。
朝・昼・夜の3セット行う事が推奨されています。
②ふくらはぎの筋力トレーニング
座って行う時同様に、立った状態で踵上げを行います。
バランスが不安定な人は壁や手すりを使ってバランスを取りながら行いましょう。
当たり前の話ですが、座って行うより立って行う方が自分の体重がかかるために負荷が大きくなります。
また、踵上げを行う時は重心を踵からつま先側に移動させ、踵を下す時には重心が踵側に移動します。
立って行う踵上げには、前後方向へのバランス訓練の意味合いも含まれます。
③壁伝い背筋伸ばし運動
壁の方を向き、壁と自分の身体との間に足一つ分隙間を開けます。
足の位置はそのままで、壁にもたれかかるようにしながら、壁伝いに両手を上に挙げていきます。
壁に胸をくっつけるようなイメージで出来るだけ背中を反らすよう意識して運動を行いましょう。
座って行う、立って行う運動をいくつかご紹介しました。
受傷後4週間までは座って行う運動を取り入れ、4週以降は徐々に立って行う運動を少しずつ始めるようにしましょう。
それでは最後に今回の内容をまとめていきます。
まとめ
圧迫骨折のリハビリでは、安静による廃用と骨の状態の安定、そして体幹や下肢機能の強化です。
リハビリ開始の時期はコルセットが完成してからになります。
受傷後2週以降で痛みが多少軽減した頃から少しずつ起きて過ごすようにし、4週以降は痛みもだいぶ楽になっていますので、徐々に運動強度をあげていきましょう。
無理をすると骨折の治癒が遅くなり、安静にしすぎると体力や筋力の低下が起きてしまうため適度な運動が求められます。
いくつか運動方法をご紹介しましたが、骨の状態が良くなるまでは常に「前かがみ」動作には注意して行いましょう。