足の捻挫後からしばらく安静にしていても、なかなか治らないという事はありませんか?
足首を捻っただけの軽い捻挫と思っていたけど、治りが悪い場合には何かしらの原因があります。
捻挫が治るまでにはある程度の期間が必要ですが、それ以上の期間が経っているのに痛みが残っているのは問題です。
今回は捻挫の治りが悪い時に考えられる原因についてまとめてみました。
目次
捻挫治療のキホン
まずは捻挫の治療の基本を知っておきましょう。
そうでないと通常の経過を辿っているのか、治りが悪いのかわかりませんので。
まず、捻挫には重症度があり、Ⅰ度~Ⅲ度の3段階に分けられます。
Ⅰ度(軽症):靭帯の一部が損傷。軽度の炎症と痛みがある状態。
Ⅱ度(中等症):靭帯の一部が断裂。広範囲の痛みや腫れがある状態。
Ⅲ度(重症):靭帯が完全に断裂しており、関節が不安定な状態。
これらの重症度の違いで、治る期間の目安も変わります。
捻挫治療の基本は、「患部の安静」
まずは固定と免荷になります。
固定とは関節や靭帯(じんたい)の保護のために行います。
固定期間の目安は、Ⅰ度捻挫では1週間、Ⅱ度捻挫では2~3週間、Ⅲ度捻挫では3~4週間程度が目安です。
あくまで目安であり、靭帯損傷の程度や複数の靭帯を損傷している場合はもう少しかかる可能性があります。
この固定期間では関節に負担をかけたくないので、松葉杖をついて体重が足にかからないようにしたりもします。
この期間中に固定や免荷で関節の保護がなされていないと、靭帯組織の治癒がうまくいかずに治療期間が長引くことになってしまいます。
受傷初期は早く治すためにしっかりと「安静にする」事が、結果的に早く治すためのポイントとなります。
次は治療期間の目安をみてみましょう。
捻挫の治療期間の目安
固定期間が終わったら治っているのかというわけではなく、ここからが捻挫治療の本番になります。
固定期間中には足関節の動きが硬くなったり、筋肉の柔軟性や力が衰えたりといった事が起こります。
捻挫の二次的な障害を解決して、やっと「治った」と言えるでしょう。
その間のリハビリなども考えると、本当の意味で捻挫が治る期間の目安は以下のようになります。
Ⅰ度:2~3週間
Ⅱ度:6~8週間
Ⅲ度:8~12週間
Ⅱ~Ⅲ度の中等度~重度にかけては2~3カ月かかるという事です。
あくまで目安であり、激しいスポーツ活動への復帰などには、もう少し時間がかかる場合もあります。
これらの期間を過ごしても、まだ痛みが残っている場合はどんな事が考えられるのでしょうか?
次の項でいくつか例を挙げてみます。
捻挫が治らない原因は?
何回目の捻挫なのか
原因として考えられるのは、まずは捻挫が何回目なのかです。
捻挫って癖になるって聞いたことありますか?
靭帯が一度伸びてしまうと、完全に元の強度に戻る事は難しいとされています。
初回の捻挫と3回目の捻挫では、元々の靭帯強度が違うので、複数回経験している場合はどうしても治りが遅くなってしまいます。
複数の靭帯が損傷している
足首の捻挫で圧倒的に多いのは前距腓(ぜんきょひ)靭帯の損傷です。
足首を内側に捻ったらほとんどはこの靭帯の損傷になります。
ただ、足の靭帯はそれ以外にも多く存在し、前距腓靭帯と一緒に他の靭帯が損傷している可能性もあります。
整形外科を受診すると、ほとんどはレントゲンを撮って骨折の有無を確認されますが、レントゲンでは靭帯の損傷は写りません。(医師は関節の隙間の広さなどで靭帯損傷がありそうか判断しています。)
特に受傷直後は腫れや痛みも強く、何をしても痛いなど損傷部位を詳細にみれない事が多いです。
見落とされる可能性があるという事です。
前距腓靭帯と一緒に損傷しやすい靭帯は、踵腓(しょうひ)靭帯、前脛腓(ぜんけいひ)靭帯、後距腓(こうきょひ)靭帯などがあります。
どの靭帯が損傷しているか確認するためには、その靭帯を押して痛みがあるか確認する圧痛が主な手段です。
でも、受傷直後って全体的に腫れているから、どこを触られても痛い事が多いので詳細までは分かりにくいんです。
対処法としては、時間の経過と共に軽減してきた痛みの経過を、本人が詳しく分かっておく事が大事です。
「今は足をどう動かしたら痛む」とか「ココを触ったらまだ痛い」とか。
問診で答えてくれる内容が詳しければ詳しいほど、残っている痛みの原因の絞り込みが容易になりますので、見落とされる可能性は少なくなります。
不動
捻挫の治療では初期の固定が大事とはお伝えしましたが、動かさなすぎるのも問題なんです。
ある程度の固定期間が終わったら徐々に足を動かさないと反対に治りが遅くなる場合もあります。
靭帯などの組織の修復を促すためには血流が大事ですが、動かさなさすぎると血流が悪くなるために治りも遅くなります。
どこまで動かして良いかは専門知識がないと判断が難しい所もあるのですが、「足の指を動かす」「足首周辺の皮膚を優しく触る」は初期の段階から自分で出来るセルフケアとしてお伝えします。
ここまでは捻挫の治りが遅くなってしまう原因について挙げてみました。
次は捻挫後に起こることがある、特に注意が必要な症状についてお伝えします。
注意すべき症状
腓骨(ひこつ)筋腱脱臼
外くるぶしの後方に腓骨筋腱という物があり、怪我した方の脚で踏ん張ったりした時に、この腓骨筋腱が外くるぶしの上に浮き上がってきてしまい痛みが出る事があります。
腓骨筋腱が浮き上がらないように抑えてくれている腓骨筋支帯というベルトのようなものが壊れてしまったために、腓骨筋が収縮した時に腱が浮き上がってしまうんです。
残念ながら、腓骨筋腱脱臼が起こってしまったら治す方法は手術しかありません。
足関節不安定症
捻挫後は靭帯の強度が下がり、今までより足関節のぐらつきを止めるのが難しくなります。
通常は足関節周りの筋肉を鍛えたり、バランス訓練などのリハビリをする事で、捻挫後の状態でも足関節に負担がかからないように治療しますが、そういった治療を受けなかった場合には足関節が不安定なままで動くことになります。
足関節が不安定なまま動く事で少しずつダメージが蓄積されて、捻挫から数年後に足首が痛くなる事があります。
レントゲンを撮ってみると足首の骨の変形(変形性足関節症)がみつかる場合もあります。
足首の安定性を高めてくれる筋肉を鍛え直したり、バランス訓練などの捻挫後に行うリハビリを再度行う事で、痛みは軽減しますが、足首の変形が起こってしまった場合は完全に治す事が難しくなる事もあります。
そうならないためにも、捻挫後にしっかりと治しておく事をおススメします。
まとめ
捻挫の治りが悪い場合に、まず疑われる事は「捻挫の初期治療の対応が適切だったか」です。
捻挫の重症度と患部の安静がきちんと行われたかどうかが重要なポイント。
初期の対応がしっかりしていても治りが悪い場合は、過去の受傷歴やその他にも損傷している組織がないかしっかりとチェックしてもらう事が必要になります。
受傷後に数カ月経っても痛みがある場合は、「足関節不安定症」の可能性もあります。
しっかりとリハビリでの治療を行いましょう。
まれに「腓骨筋腱脱臼」が起こり、外くるぶしまで腱が浮き上がる事があれば、完全に治すためには手術が必要です。
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