小指がしびれるなんて経験はないですか?
小指や薬指がしびれて他の指にしびれがない状態は尺骨神経という神経の障害の可能性が高いです。
尺骨神経が障害されやすい部位は2か所あり、肘の内側の「肘部管」と手首にある「ギヨン管」です。
今回は小指のしびれの原因となる2つの障害部位について解説していきます。
小指がしびれる原因
小指がしびれる原因は尺骨神経にあります。
手の神経は3つの神経で構成され、他には正中(せいちゅう)神経と橈骨(とうこつ)神経からなります。
それぞれに守備範囲が決まっており、手のひら側の親指から薬指の半分までが正中神経、薬指と小指が尺骨神経、手の裏側の親指から中指までを橈骨神経が支配しています。
小指や薬指は尺骨神経の支配領域なんです。
この尺骨神経が何らかの形で圧迫を受けると小指側にしびれや痛みが出る事になります。
尺骨神経が圧迫を受けやすいポイントが2つあります。
1つ目が肘部管(ちゅうぶかん)という場所、2つ目はギヨン管という場所になります。
この2つの場所が尺骨神経を圧迫してしまう原因となりやすい所で、それぞれ肘部管症候群、ギヨン管症候群といいます。
どういった疾患なのかは次の項目で詳しく解説していきます。
尺骨神経の障害
肘部管症候群
肘部管は肘の内側にあります。
肘の内側の骨をぶつけてジーンとしびれた経験はありませんか?
肘部管はその部位になります。
二の腕の内側部分(上腕二頭筋、上腕三頭筋の内側)の筋肉が硬くなったり、肘から先の内側にある筋肉(尺骨手根屈筋)が硬くなっても、尺骨神経が絞扼されてしまう事になります。
ギヨン管症候群
ギヨン管は手関節の小指側にあります。
発生頻度としては肘部管症候群よりは低いと言われています。
ギヨン管部分への直接的な圧迫でも小指のしびれなどが起き、ロードバイクのグリップを握る位置でギヨン管が圧迫されやすい事から「サイクリング麻痺」とも呼ばれています。
障害部位の見分け方
この2つの尺骨神経障害の見分け方は、簡単な方法だとティネルサインになります。
ティネルサインとは神経障害を引き起こしやすい部位を叩く事で、症状が誘発されるかを確認するテストです。
肘部管であれば肘の内側周辺を、ギヨン管であれば手関節の小指側にある豆状骨辺りを叩いてみましょう。
叩く事で小指や薬指のしびれや痛みが誘発されるのであれば、その部位での症候群が疑われます。
また、尺骨神経障害かどうかを確認するテストに「フロマン徴候」というものがあります。
両手の親指と人差し指でしっかり紙をつまんで、左右に引っ張りあいます。
そうすると尺骨神経障害が起こっている側は親指の第一関節が曲がってしまいます。
尺骨神経障害がなければ、親指を押し付ける力がしっかり働くので、指は曲がってこないのですが、尺骨神経障害があると親指を押し付ける力の発揮ができないために親指を曲げて押さえつける代償動作がみられるようになります。
これは尺骨神経障害があるかどうかが分かるテストになるので、このテストで親指が曲がるようであればティネルサインで部位を確認しましょう。
ティネルサイン以外にも肘を曲げて症状が誘発されるのであれば肘部管、肘を曲げても症状がなければギヨン管が原因になっている可能性が高いとも言えます。
何故、神経の通り道が狭くなり神経を圧迫してしまうのでしょうか?
神経を圧迫してしまう要因は肘や手首の「使い過ぎ」が主な原因となります。
使い過ぎにより腱や靭帯、筋肉が肥厚してしまって通り道が狭くなるというのが一番の発生要因となるでしょう。
その他にもガングリオンや骨折の後遺症によるものもあります。
ガングリオンの原因も使い過ぎによるものが大きいため、ほぼ使い過ぎが原因となります。
ちなみにガングリオンというのは、関節包(関節液を入れている袋)や腱鞘(腱を外側から保護している鞘のようなもの)にできる腫瘤で、中に透明なゼリー状の液が入っている良性の腫瘍です。
障害部位の見分けがついたのなら治療法をみてみましょう。
治療法は?
肘部管症候群、ギヨン管症候群どちらも原因は使い過ぎによる所が大きいので、負担となる動作は極力避けるようにはしておきましょう。
そうはいっても、しなければいけない動作も多いので、安静にしておく事も難しい所がありますね。
自分で行える治療方法は、筋肉や腱のマッサージでセルフケアをしっかり行いましょう。
肘部管症候群であれば、肘の内側を中心に上腕部分や前腕部分にかけて硬い所を探して揉み解しましょう。
力こぶの筋肉「上腕二頭筋」や二の腕の「上腕三頭筋」の境目や、肘から前腕にかけての内側にある「尺側手根屈筋」なんかが硬くなっている事が多いです。
ギヨン管症候群では、小指球のマッサージが有効です。
小指球は手関節の表側にある小指側の膨らみ部分で、小指球が硬くなるとギヨン管を構成している骨の動きも悪くなり、ギヨン管の中の圧力が高まりやすくなります。
また、手のひらを裏返す動き(回内)が悪くなると、動きが悪い分の代償的な動きとして手首の小指側のかかる負担が大きくなる傾向にあります。
回内の動きを改善するには、手のひらを裏返した状態にして、肘の外側から前腕部分にかけてもみほぐしましょう。
まとめ
小指側のしびれの原因は尺骨神経障害が考えられ、その障害を起こす原因は「肘部管症候群」と「ギヨン管症候群」の2つが挙げられます。
肘部管症候群では肘の内側を中心に上腕や前腕の内側にある筋肉の硬さが原因となっている事が多く、ギヨン管症候群では、小指球の硬さや手のひらを裏返す動きが悪いことなどが考えられます。
自分でできるケアとしては、負担となりそうな動きを回避する事と硬くなった筋肉をマッサージで揉みほぐす事です。