人間が何かするためにはエネルギーが必要です。
このエネルギーを生み出すのに重要な役割を担っているのが「ミトコンドリア」です。
最近の研究で、ミトコンドリアは健康面や病気の予防など色んな面で活躍する事も分かってきており、注目されています。
「ミトコンドリアって名前は知っているけど一体何?」って人も実は結構多いのではないでしょうか?
今回はミトコンドリアの働きと増やし方をお伝えします。
目次
人間のエネルギーを作る2つのエンジン
ミトコンドリアについて知る前に、人間のエネルギーの作り方を簡単に説明します。
人間のエネルギーの作り方は主に2パターンあり、その1つがミトコンドリアエンジンでもう1つが解糖エンジンです。
人間のエネルギーを作り出すのに必須なのが、炭水化物(糖質)です。
糖質をグルコースとして利用し、使わなかった糖質はグリコーゲンという形に変換して、脂肪として蓄積しておき、エネルギーが足りなくなったら蓄えていた脂肪を燃焼してエネルギーを作るのが基本です。
この糖質の使い方が2パターンに分かれるという事で、ここから2つの機能を詳しく説明していきます。
・解糖エンジン
解糖エンジンは、糖質だけを単独に分解するやり方です。
短距離走などの無酸素運動でもエネルギーを作って消費出来るのは、この解糖エンジンのおかげで、専門用語で「嫌気性代謝(けんきせいたいしゃ)」と言われるものです。
糖質をエネルギーに分解する際に、疲労性物質で有名な乳酸を作り出しながら行うやり方です。
解糖エンジンは瞬発力に優れるため、若くて活発に動く時に活躍し、「低酸素」、「低温」、「高糖質」の環境でよく作動します。
・ミトコンドリアエンジン
ミトコンドリアエンジンは「酸素」を利用してエネルギーを作り出すシステムです。
ミトコンドリアも炭水化物を原料にエネルギーを作り出すのですが、この時に同時に酸素も消費しながら行われるため「酸化性代謝」と呼ばれます。
このミトコンドリアエンジンは持久力に長けており、「高酸素」、「高温」、「低糖質」の環境でよく作動します。
エネルギーを生み出す過程がこの2つのエンジンに分かれているのですが、効率が良いのはミトコンドリアエンジンによる酸化性代謝です。
エネルギー効率は嫌気性代謝より18倍良いと言われています。
若くて活発な時期は基礎代謝や新陳代謝も良いため、疲労(乳酸)も溜まりにくいでしょうが、中年以降ではエネルギー効率の良いミトコンドリアエンジンを主に使うような生活が勧められます。
では、どうしたらミトコンドリアエンジンを主に使えるようになるのでしょうか?
これはとても簡単です。
糖質を取り過ぎないようにすれば良いのです。
糖質を多く取り過ぎると血糖値も上がってしまい、血中の糖を真っ先に利用してエネルギーを作りますので、どうしても解糖エンジンが主になってしまいます。
ミトコンドリアエンジンでも糖質は使いますが、酸素があればエネルギーを生み出す事が出来ます。
糖質過多の生活を続けていると、ミトコンドリアの量も少なくなってしまい、働きも悪くなってしまいます。
ミトコンドリアの働きが悪くなると、その後にもう一つ健康被害が起こりやすくなります。
これのメカニズムを知るにはミトコンドリアについてもう少し詳しく知らなければ分かりにくいので、まずはミトコンドリアについてもう少し詳しく説明していきます。
ミトコンドリアの役割
ミトコンドリアって名前は聞いたことあるっていう人は多いでしょうが、一体どういう物なのでしょうか?
ミトコンドリアとは、赤血球以外のすべての細胞にみられる細胞小器官です。
地球上に酸素が誕生した時は細胞にとって、酸素は酸化の原因となる毒のような存在だったのですが、酸素を利用できる細菌を細胞が取りこんだ事によって、酸素を消費しエネルギーを生み出せるようになったのです。
この取りこんだ細菌が後の「ミトコンドリア」になります。
近年の研究で、このミトコンドリアの量が健康維持を左右する事が分かってきています。
ミトコンドリアは酸素を消費してエネルギーを作り出すという役割と、もう一つ大事な役割があります。
「アポトーシス」という細胞を死滅させるプログラムです。
細胞を死滅させるプログラムとみると悪いように聞こえますが、古くなった細胞の寿命を終わらせてくれる働きがアポトーシスです。
このアポトーシスのおかげで、細胞の新陳代謝が出来ているという事です。
アポトーシスが正常に働くためには、酸素を消費してできる活性酸素が必要で、活性酸素があるおかげで古くなった細胞やがん細胞などを死滅させて、新しく出来た細胞に道を譲る事ができるのです。
活性酸素は老化の原因や細胞を劣化させるなど良いイメージも持つ人は少ないでしょうが、人間の生理現象を引き起こすために重要な役割があったりします。
ここでミトコンドリアの働きが悪くなるとどうなるでしょう?
古くなった細胞やがん細胞の死滅プログラムが作動しない細胞が増えたり、正常な細胞に悪さをしたりしてしまいます。
結果的にがん細胞が増殖したり、正常な細胞に悪さをした結果、アルツハイマー病やパーキンソン病、ALS(筋委縮性側索硬化症)などの神経変性疾患が発症したりするリスクが高まります。
ミトコンドリアの役割が健康に重要な事は伝わってでしょうか?
それでは、ミトコンドリアの増やし方も知りたくなりましたよね?
次の項でミトコンドリアの増やし方をお伝えします。
ミトコンドリアの増やし方
ミトコンドリアの増やし方は3つあります。
①寒さ
寒い環境に身を置くと、身体はエネルギーが必要と感じます。
身体の細胞がエネルギーを生み出すためにミトコンドリアの量を増やすという事が研究により明らかになっています。
寒冷刺激には温冷交代浴がオススメです。
→温冷交代浴の驚くべき健康効果。自宅のシャワーで簡単に出来る方法 (karada-reset.com)
②運動
運動をする事でもミトコンドリアは増えます。
運動量としては「ややきつい」と感じる程度の刺激が必要で、強度が高い運動を行う事で身体がエネルギーを必要とする事がミトコンドリアを増やすことに繋がります。
オススメの運動は、速く歩くことを意識したウォーキングです。
運動に不慣れな人でも、怪我のリスクなく行えると思います。
③糖質制限
高糖質の環境では、ミトコンドリアが働かずともエネルギーは作れてしまうので、ミトコンドリアの働きは弱くなっていってしまいます。
ミトコンドリアの量を増やすためには、低糖質の状態を作る事です。
プチ断食などで「空腹時間」を作り出すと、長寿遺伝子のサーチュイン遺伝子が活性化してミトコンドリアが増えたとの報告もあります。
食べ過ぎに注意して、腹8分を守り、時には一食抜いて空腹を感じさせるとミトコンドリアの量は増えます。
ミトコンドリアの増やし方をお伝えしましたが、ポイントはミトコンドリアにエネルギーが足りないと思わせる事です。
エネルギーが足りないと思わせると、もっとエネルギーを作るためにミトコンドリアは量を増やしエネルギーの供給が追い付くようにしてくれます。
反対に運動しない、食べ過ぎなどエネルギー消費が上手くいっていないとミトコンドリアの働きは弱まってしまい、大事な働きである「アポトーシス」が上手く作動できず、がんやアルツハイマー病などのリスクが高まってしまうと言えるでしょう。
まとめ
ミトコンドリアはエネルギーを作り出す役割と古くなった細胞を死滅させ、新しい細胞と入れ替える役割を持っています。
この2つの役割は人間が生きていくのにとても重要な働きをしています。
ミトコンドリアの働きが弱くなってしまうと、「エネルギーをうまく作れない」や「古くなった細胞やがん細胞の増殖」が起きてしまい、身体にとって不利益が出てきます。
ミトコンドリアを活発にさせて、量を増やす方法は3つ。
寒さ、運動、糖質制限です。
鍵はミトコンドリアにエネルギー不足を感じさせることで、エネルギーが不足し皿に必要と感じたらミトコンドリアの働きは活発になり量も増えます。
【参考書籍】
「腸の力」であなたは変わる:(三笠書房)
できる男はすぐ腸トレ:(フォレスト出版)