頭痛や全身倦怠感、めまいなど自律神経の乱れが原因と考えられる症状はありませんか?
また、それらの症状を改善するために生活習慣や食生活など気をつけても、なかなか思うようには改善しないという事はありませんか?
確かに自律神経の障害は生活習慣や食生活の乱れで起こりやすいのですが、もしかしたら胸郭出口症候群という疾患が原因になっているかもしれません。
腕や手先のしびれや脱力感、冷感などの症状がある場合は特に疑われます。
今回は自律神経障害を引き起こす意外な原因疾患について説明します。
胸郭出口症候群とは
胸郭出口症候群とは、頸椎(首の骨)から出てきた腕の神経が、首の筋肉や鎖骨などの間を通って腕まで行くまでの道のりの途中の通り道(胸郭出口)が狭くなってしまい、神経がストレスを受けてしまう事で起こります。
この疾患は手のしびれや脱力感、その他にも頭痛や自律神経の障害などを引き起こす疾患とされています。
胸郭出口症候群について詳しく知りたい方はこちらも参考にして下さい。
→胸郭出口症候群とは?症状と原因を分かりやすく解説します。
少し身体の知識がある方からすると、「なんで自律神経の障害も起きるの?」って疑問に思いませんか?
僕は最初思っちゃいました。
首から出てきた神経は腕神経叢(わんしんけいそう)という腕から手先にかけての運動と感覚の神経の集合体を作って、手先まで行く道の途中で神経の絞扼が起こるのが胸郭出口症候群なのです。
腕神経叢には自律神経の線維が混ざっていないはずなんです。
しかも、自律神経の線維は首よりも下の「胸椎」から出ています。
首から鎖骨付近で絞扼が起こる胸郭出口症候群なのに、自律神経の中枢はそれよりも同じ高さか下になる胸椎なんです。
末梢に向かう神経は基本的に下行性なので「自律神経は関係ないじゃん。」と思ったのですが、調べてみるとやはり胸郭出口症候群でも自律神経の障害は起こるようです。
次の項目では、何故胸椎から出ている神経も関係あるのかについて説明します。
何故、自律神経の障害も起きるのか?
先ほども言ったように、自律神経は胸椎からも出ています。
自律神経について詳しく知りたいからはコチラも読んでみて下さい。
→自律神経とは何か?自律神経の役割と仕組みを理解しよう
正確に言うと、交感神経の中枢が胸椎から腰椎にあるんです。
この交感神経が胸椎から出たのち、交感神経幹という神経線維の束になった部分を経て、一部の神経が頸椎の神経節に向かって上がります。
*神経節=神経が集まる中継地点
頸椎の神経節(下頸椎・中頸椎神経節)を経由した後に腕神経叢に合流します。
頸椎から出た腕神経叢には自律神経の線維は含まれていないのですが、ここで交感神経の線維が合流する事で腕の方にも自律神経が行き渡るようになります。
腕神経叢と合流した後に胸郭出口で神経にストレスが加わるために、胸郭出口症候群では自律神経の障害が出るんですね。
また、胸郭出口でストレスを受けた神経線維は痛みを伝える神経を通って、脳の方まで情報を伝えようとします。
この痛みの刺激が脊髄を通って、脳の自律神経をコントロールしている視床下部(ししょうかぶ)という所に情報が伝達される事で、自律神経や内分泌ホルモンなどが影響を受けるようになるそうです。
少し難しい話になりましたが、胸郭出口症候群では自律神経にも影響が出てしまい、自律神経の障害により全身的な症状や血管系の症状が出現すると理解しておきましょう。
自律神経の症状は何がある?
胸郭出口症候群で起こる自律神経の症状はどんなものがあるのでしょうか?
これには局所症状と全身的な症状とあり、それぞれに分けて挙げてみましょう。
・局所症状
肩こり、上肢のしびれ、上肢痛、頚部痛、手指の腫脹感、手指の冷感、手指の異常発汗
・全身症状
頭痛、悪心・嘔吐、全身倦怠感、動悸、胃腸障害、気候による変調、眼症状、微熱、立ち眩み、不眠、息切れ
全ての症状が出るわけではなく、人によって出る症状は違います。
局所症状であれば、首から肩それに腕など胸郭出口で受けたストレスが原因で起きているのかと思いやすいですが、全身症状ともなると胸郭出口症候群が原因で出ているとはなかなか思えないですよね?
症状の出方は、最初は局所症状から始まります。
全身症状は胸郭出口症候群が発症してから長期間経過してくると徐々に出始めるようで、罹患期間が1年以上にもなってしまうと全身症状が出現する可能性が高くなるようです。
さらに、胸郭出口症候群が1年以上経過した人には、うつや怒りっぽくなったりなどの精神症状も出現しやすくなる傾向にあります。
早めに治療を行った方が良さそうですね。
まとめ
胸郭出口症候群は自律神経の障害も引き起こす疾患です。
胸郭出口で絞扼される腕神経叢には自律神経の線維が含まれていませんが、胸椎から出た交感神経線維の一部が上がり、腕神経叢に混ざるために自律神経の症状が引き起こされます。
腕の局所症状があり、全身倦怠感や頭痛などの症状がある人は胸郭出口症候群が原因での自律神経障害かもしれません。
1年以上経過してしまうと全身症状や精神症状が出やすくなりますので、疑われる場合は早めの治療をおススメします。